自称グルメ 蕎麦

蕎麦

私は蕎麦好きである。
世間一般では、蕎麦好きには一家言ある奴が多い。いわゆる面倒くさい奴である。
私もその一人である。ゴホン。

私の蕎麦の食べ方を紹介しよう。
私が蕎麦に求めるのは、まずのどごし。それから香りと味。最後に味変である。
蕎麦と言えば盛り蕎麦である。ざるでも良いが海苔が邪魔。

まず、蕎麦を2,3本箸で取る。持ち上げてどれくらいの長さか見る。あまり長いと喉を通らないので注意する。長すぎる場合は取り直す。
次に今取った蕎麦をつゆにつける。のどごしを楽しむのであるから、つゆはあまり重要ではない。つけてもつけなくてもたっぷりつけてもどうでもよい。ただし、すするのであまりつけすぎるとつゆが飛び散ってしまうので注意。
次につゆにつけた蕎麦をすする。のどごしを楽しむのですする必要は必ずしもないがすすらないと喉に入らない。
すすった蕎麦は噛まずに丸呑みする。そのときに喉を落ちてゆく蕎麦の感触を楽しむ。これがなかなか難しい。慣れるまでは3,4回噛んだ後で飲むようにするとよい。
いかにも消化に悪そうだが、別に肉を丸呑みするわけではないからいいだろう、と釈明する。
大体盛りの半分くらいすすったら次に香りを楽しむ食べ方に移行する。
まず、蕎麦を箸で取る。今度は本数も長さも適当でよい。
今取った蕎麦をつゆにつける。香りや味を楽しむのであるから、つゆはつけすぎない方がよい。なんならつゆはつけずに食べてもよい。
次につゆにつけた蕎麦を口に入れる。すする必要はない。
口に入れた蕎麦を何回か噛む。噛むとそこから蕎麦の香り、味がにじみ出てくるのでその香り、味を楽しむ。また、噛むときの食感を楽しむ。何度も噛むのでのどごしは得られないが、香り、味は十分に楽しむことができる。
最後に盛りの3/4を食べ終わったところで味変に移る。
盛り蕎麦だと、大概ネギとワサビがついてくる。場合によっては海苔もあるかもしれない。
まずネギ(と海苔)をつゆに入れる。
ワサビについては場合分けする。まず、本わさびが供されている場合は、たとえワサビが苦手でも一食の価値はある。次に粉ワサビを練ったものの場合。これもまあ食べる。味は容易に予想がつくが味変であるからあまり細かく言わずに食べる。チューブワサビの場合。さすがに食べる気にはならない。ちゃんとした蕎麦屋であればチューブワサビなんて出さないとは思うが。
ワサビはつゆに溶かすのではなく蕎麦に乗せる。つゆに溶かすかどうかは人による。池波正太郎は醤油に溶かすとワサビの香りが飛んでしまうと言っているが、北大路魯山人は醤油に溶かすことによって醤油がおいしくなると言っている。私は正太郎派であるから醤油には溶かない。
鮮度の良い本わさびなら、それだけを直接食べることも有り。
ワサビをのせた蕎麦をつゆにつける。味変を楽しむのであるからここでの主役はネギ、海苔、ワサビ。好きなだけつけて食べる。
つゆにつけた蕎麦を口に入れる。すする必要はない。というかワサビがあるからすすると咳込んで大変なことになる。
口に入れた蕎麦を何回か噛む。ただし、食感を楽しむと言うよりは薬味と蕎麦、つゆを混合して口内調味を楽しむ。特にワサビは個性が強いので、もはや蕎麦の香りは楽しむべくもないが、味変なので別にどうでも良い。
これで盛り蕎麦一枚終了である。
蕎麦湯がつく場合には蕎麦湯を飲んでも良い。

この食べ方はいわゆる分析的な食べ方だと思う。
それぞれの味覚を独立して味わう食べ方だ。
いい食べ方とは言えないかもしれない。
例えば、生姜焼き定食を食べるとき、まず生姜焼きだけ食べて、その後にキャベツだけを食べて、最後にご飯だけ食べるという食べ方。
そんな食べ方うまいとは思わない。やはり全部を一緒に食べて口内調味して食べるのが普通だ。
まあそれでも食べ方の一つとして認知していただければ幸いである。